ナマズンの会計士受験お勉強メモ

会計士試験に必要だろうなと感じた事前知識や心構えを書くぞ

論文式試験勉強法〜租税法〜

このブログの論文式試験のお話は、主に12月組又は過年度論文生を想定しています。5月組は全く異なるアプローチでないと時間が足りず通用しないと思います。

 

 

<租税法とは>

租税法は「法人税法」「所得税法」「消費税法」の3つをあわせたものをいいます。

試験は理論問題と計算問題からなりますが、会計学と異なり複数の視点に立つ必要がなく、企業法と異なり趣旨等を論じる必要もないため、理論のウェイトはかなり軽いです。計算問題で「どの条文を根拠にその解き方をしているのか?」ということがわかっていれば理論はほとんど解けるため、計算中心の勉強になります。

なお、会計学と異なり仕訳を書いたり連結財務諸表のような派手な問題はありません。

 

<初学者向け、勉強開始時期について>

短答終わってから始めれば良いです。

予備校によっては短答前から講義があるところもあるかもしれませんが、短答の勉強最優先で構いません。

 

短答が終わると、勉強のスタンスを短答用から論文用に切り替える必要があります。

短答では文章を読んで○×の判断ができればよかったのですが、論文では白紙の状態から文章を書かなければなりません。

つまり、「ざっくりと頭でわかっている状態」から「正しい言葉で説明できる状態」にまで進化させる必要があります。

勉強の目的が異なるため、論文用の勉強に慣れるには1ヶ月〜2ヶ月程度を必要とします。

この間に会計学や企業法の論文対策を重視しすぎても全く進みませんし、最悪勉強自体が嫌になってしまう可能性があります。

 

この点租税法の勉強は主に今までやってきた計算の勉強とほとんど変わらないため、勉強の仕方自体は苦痛にならないかと思います。

このため、時間を無駄にしないためにも、短答直後は租税法を集中的に行い、合間の時間で他の科目の論文対策を行い慣れていく、というやり方が効率が良いかと思います。

 

したがって、

短答直後から講義のペースに合わせて勉強を開始。

所得税法消費税法についても講義のペースに合わせて行えるように、12月、1月は法人税法を重点的に行い講義に遅れないようにしておきましょう。

 

 

<租税法に関する知識及び注意点>

租税法は取り組み方を間違えるとドツボにハマる科目であるため、事前に知っておくべき事及び注意すべき事を書いていきます。

①本試験では「得点比率52」を超える点数はかなり低く、高得点層も低い。

②答練や模試では「得点比率52」を超える点数は低いが、高得点層は高い。

③出題範囲は狭いが覚えるべき項目が多い。

④「論切り」が最も横行している。

⑤初学者でも5月あたりには過年度論文生を超えられる。

⑥苦手意識を持ちやすい。

 

〜解説〜

①計算は60点分あります。5月組の多くが全く点数が取れない状態で本試験に臨むためか平均点がかなり低く、計算20点程度取れば合格ボーダーを超えます。理論で取れていれば計算1桁でも足切りません。逆に高得点層については、問題の分量が多く全てに手をつける事ができなくて高得点が取れない状態となっています。計算40点もあれば偏差値70を超えます。

 

②予備校が実施する答練や模試では、受験生が見た事のある問題形式が多いということもあり、ちゃんと時間内に終わるように作られています。したがって、5月組が点数を取れないことに変わりはありませんが、高得点層は本試験よりも高くなります。計算40点あっても偏差値は60ちょい程度になります。

 

①、②から、普段の答練での点数が低くても許されるという訳ではないことがわかると思います。本試験の方が点数が下がりますので、普段の答練では少なくとも計算で30点以上を取れるようにする必要があると思います。また、平均点を下げてくれる層がいるということはそれだけ「得点源」にできるということです。会計学や監査論で稼ぎにくい分を租税法で稼ぐ事ができればかなり有利に戦えます。

 

法人税の出題範囲は財務会計論の個別論点とそこまで変わりません。むしろ少ないと思います。しかし、各論点ごとに異なる計算方法が設けられており、用いる割合等の数値の理由も「法律で定めたから」というものがほとんどで、非常に覚えにくいです。

また所得税、消費税は計算の仕方が決まっているため、複数の計算方法を覚える必要はありませんが、こちらも用いる割合等の数値の理由は「法律で定めたから」がほとんどで、一つ一つ正確に覚える必要があります。

 

④計算式を一つ一つ覚える事は苦痛であり、割合も覚えにくいものが多いです。また、前述の通り平均点が低いため意図的に勉強する範囲を切って、「得点比率52を死守」という方針の方が多々います。このため論切りがかなり横行しています。「消費税法のテキスト開かずに本試験受けた」という合格者も稀にいます。

 

③、④から、租税法は計算センスより暗記量がものを言うことがわかると思います。ここで暗記を怠ると低得点層の仲間入りを果たせます。

暗記モノは覚えようとしないと身につきません。体系的な理解だけで名称や計算式を覚えられたらその人の脳はアストラル世界に繋がっているのでしょうね。目標点数を設けて、少しでもこの科目で有利になるように、論切りせずしっかり覚える事をオススメします。

 

⑤租税法は暗記モノの面が強く、時間をかければかけるほど点数が伸びると言われています。だからと言って初学者が過年度生に勝てない訳ではありません。過年度生は当然に強く、中には前年度の試験終了後からずっと租税法の勉強に力を入れている人もいます。しかし、実際には「過年度生=科目合格に届かなかった人」であり、決して租税法が得意という訳ではありませんから、序盤は厳しいですが、テキストを一順し終わる頃には初学者でも過年度生以上の力を身につけることが可能なのです。

 

⑥これは主に5月組過年度生の方に関係する話です。5月組の方は非常に短い勉強期間で本試験に臨むこととなり、「範囲が終わらない」「話が細かい」「計算がややこしい」などの印象から苦手意識をもつ方が多数います。こうなると過年度生になったときに、「租税法は苦手だから」とか「租税法は点数が低くても足引っ張らないから」と言ってロクに勉強しなくなる場合があります。時間をかけて一からやり直せば必ず伸びる科目ですから、苦手意識を持つ前に何故点数が取れないのかを振り返り、反省しましょう。

 

⑤、⑥から、有効な勉強をする期間を最も多く確保することのできる過年度生が一番有利にも関わらず、必ずしもその通りの結果にならないことがわかります。過年度生は初学者に抜かされないように、初学者は周りの初学者に置いて行かれないように、そして何より、5月組を見て安心することのないように、勉強をして高得点を狙いましょう。

 

 

<勉強の仕方>

※2月〜3月は会計士受験名物の答練地獄期間になりますので、短答の計算の勉強とは少し変えています。

 

・講義受講期間中

①講義を受ける

②3日以内に習った範囲の問題集は確実に正答できるようにする

③②から3日〜1週間空いたらまた解き直す

④①〜③を繰り返し、「○○税法」の最終講義が終わると同時に、その範囲までの復習を終わらせておく。

(注意)勉強に集中できる期間がかなり短いですが、必ず復習を行ってください。他科目の勉強もしなければならないため、無理をしてでも答練地獄が始まる前に講義で習った範囲までの復習は終わらせてください。この時点では「習った=完璧」を目指す必要はなく、ある程度の知識が残れば十分です。答練地獄が終わる4月から完璧を目指した勉強をしていけばいいです。

 

・計算答練開始後(論文答練については後述)

①計算答練が始まる前にその範囲までの学習は終わらせておく。(上記の勉強をサボらないということ)

②計算答練を受け、自己採点。点数を毎回記録する。点数記録用紙は無意識下でも目につくように配置する。

③計算答練の間違えた箇所、理解が足りなかった箇所をその日の内に見直し、解消する。

④①〜③を続け、復習していない答練が3個程度溜まったらまとめて解き直しをする。この際必ず時間を計り、制限時間以内に解けたかどうかも重視する。点数を記録し、前回と比較、下がっているor上がるべきなのに上がっていない場合は点数記録用紙に印をつけておく。また、間違えた問題は解説を見て解き直しを行う。

⑤④のあと、さらに3個溜まったら、それまでに受けた答練をすべてまとめて解き直しをする。ただし、最序盤に行った計算答練は難易度が低すぎる場合があるため、最序盤の答練の復習は必要以上に行わない。今回も時間を計り点数を記録し、悪ければ点数記入用紙に印をつけ、間違えた問題の解き直しを行いましょう。また、3回目以降の復習では「時間をどれだけ短縮できるか」という点も意識しましょう。極まると1時間の答練なら20分〜40分で解けるようになります。

 

 

<点数を伸ばすために>

①答練で見た論点は原則切らない。

②計算スピードを高めるため、普段の勉強でも時間を計る。

所得税法消費税法も切らない。

④最後の税額の求め方まで一応覚える。

 

①と②がミソです。特に②です。

本試験は分量が多いため、計算が速ければ速いほど多くの点数を積められます。

範囲がそこまで広くないため、出題される問題やみんなが解ける問題がどれか、と言うことはある程度予想ができると思います。ここで差をつけるにはスピードなんですね。

何度も繰り返し時間を計って解くことでスピードは上がりますから、慣れるまで頑張っていきましょう。

 

 

<理論の勉強>

理論問題の難易度が低く、受験生の間で差もつきにくいです。また、計算の仕方がわかっており、その根拠条文が何かを法令基準集から探し当てることが出来れば正答できます。

一部理論問題でしか扱わない論点がありますが、まずは計算を完璧にし、計算に関する理論を解けるようにし、その後理論特有の論点を学習すればいいと思います。

勉強の仕方としてはテキストを読んで覚えるというよりは、答練で出題された問題を漏れなく復習すればいいと思います。そこまで出題パターンも多くないので答練で足ります。

さらに、理屈を覚える必要はありませんから、条文番号を指摘できるようにすることを重視すればいいです。

具体的には、

問題文を読んで状況を把握する→条文が何かを確認する→再度答練を解いた時に書けるかどうかを確認する

 

 

<論文答練について>

時間配分、理論対策、知識の定着に効果があります。

①論文答練を受け、可能な範囲で自己採点。

②わかっている範囲で、間違えた箇所、理解が足りなかった箇所をその日の内に見直し、解消する。

③①〜②を続け、復習していない答練が2個程度溜まったらまとめて解き直しをする。この際必ず時間を計り、制限時間以内に解けたかどうかも重視する。出来るのであれば理論の加点箇所を理解し、採点する。

④③を繰り返したら、「基礎答練」「応用答練」などを1ヶ月程度おきにまとめて解き直しをする。難易度に関わらず得点は80点以上、時間は1時間半程度を目標にしましょう。

 

時間配分としては、

初見時

理論45分、法人税法40〜50分、所得税法15分、消費税法15分

復習時

理論30分、法人税法40分、所得税法10〜15分、消費税法10〜15分

程度だと思います。余裕はありません。

ちなみに理論は条文番号がわかっているかどうかでかなり時間が短縮されると言うだけで、初めて見た問題をこの時間で解くことは不可能です。

 

 

<最後に>

租税法はマイナー論点が非常に多いです。

マイナー論点を正確に抑えると高得点を狙えますが、それはスピードや得点が及第点に乗った後に行うべきことです。優先順位を間違えないようにしましょう。

しかし、スピードや得点が及第点に乗った後には必ずマイナー論点を抑えてください。「出題されそうだけどマイナー論点」が多数あるのも事実ですので、さらに点数を伸ばし得点源にするためには勉強しておきましょう