<企業法とは>
企業法は会社法、商法、金融商品取引法(金商法)の3つをあわせたものを言います。
純粋にテキストが分厚く、時間をかける必要がありますが、短答4科目中もっとも問題が荒れにくく、安定して高得点を取ることができます。また、管理会計論の低得点の穴埋めという役割もありますので、ぜひ得意科目になるよう頑張りましょう。
※この記事では範囲をいくつかに分け、下記の独自の呼称を使いますのでご了承ください。
・機関まで=会社法第2編の第1章、第2章、第4章つまり、「設立」「株式」「機関」の3つの範囲のことです。
・計算以降=会社法で、「総則」「機関まで」「組織再編」を除いた範囲のことです。
・商法=会社法総則と商法のことを言います。
・金商法=金商法のことを言います。
<勉強について>
企業法の講義は他の理論科目と比べ少し早めに開始されると思います。
開始直後では計算の勉強に追われている方も多くいると思いますので、講義を聞くだけ聞いて後で復習できるようにマーカーやメモを取るだけに抑え、まずは計算を進めていきましょう。
(真面目な方は計算の合間を縫って講義の進度に合わせた復習や問題演習程度ならばできると思いますので、できる方は是非復習や問題演習にも取り組んでいきましょう。)
本格的な企業法の勉強開始時期の目安としては、
①4月頭(◎)
②ゴールデンウィーク(○)
③6月末(△)
の3パターンがあると思います。
企業法のスタートが遅れれば遅れるほど、財務理論と監査のスタートが遅れるため、可能な限り早期にスタートしてください。
計算の進度にあわせて①か②を選びましょう。③はその後の勉強がカツカツになるのでオススメしません。
企業法は原典がハッキリしているため、勉強した範囲からそのまま出題されます。
イメージとしては歴史の勉強に似ています。
このため、
テキスト精読→音読or写経→問題演習
という小学生でも思いつきそうな勉強法が非常に良い効果を発揮します。
そして、短答式では一つの論点を複数の視点から見るということもないため、肢別問題の問題文のパターンも数が限られることから、肢別問題集全暗記という力技でも対応することができます。「○ならそのまま覚える。×なら解説を覚える。」みたいなやつです。
肢別問題集を利用して勉強をする場合は、1冊を通した正解率が95%以上になることを最終目標にしましょう。
ただし、95%以上になるのはあくまで試験直前で良いため、勉強中では各章ごとに80%以上や90%以上などの当座目標を各々設定していきましょう。
なお、当座目標を設定せず「○周解いたから次の範囲に進もう」などという勉強をすると、必要な知識量を確保できず、それが積み重なることで後の復習時に手のつけられない状態になっている、ということに気づくだけなのでやめましょう。
勉強を開始する際は、まず機関までの範囲をマスターしましょう。
機関までの範囲は、1章ごとの分量が多く時間がかかり、また、出題数が多く配点が多いため、早期にマスターすることで、以降の勉強が楽になるとともに、高得点を取るための基盤を作ることができます。
計算以降や商法、金商法の講義が始まるのは結構遅いはずなので、機関までの講義が終わるまでに自分の勉強と講義の進度を合わせることができると思います。
この段階まできたら講義の進度を越えましょう。企業法ならできるはずです。
講義の進度を越えて、「機関まで」と「計算以降」を7月末までに終わらせることができれば上出来です。
なお、「計算以降」の範囲には、「持分会社」や「社債」などが含まれています。
受験生の間ではよく論切り対象に選ばれていますが、必ず勉強しましょう。論文でも出題可能性はあります。そもそも短答式で普通によく出ます。
前述の通りですが、企業法には他科目(特に管理)の穴埋めという役割がありますので、必ず高得点を取らなければなりません。このため、企業法については論切りをして点数を妥協する選択肢はありません。
残るは「組織再編」「商法」「金商法」です。
「機関まで」と「計算以降」の範囲が終わる頃には財務理論や監査に手をつけなければならない状況になっているはずなので、残った3つはそれらとの折り合いをつけながら勉強することになると思います。そして残る割にはよく出題され、配点も多く、捨てるわけにはいきません。
このためこの3つは個別にお話をしていきます。
<組織再編>
遅くとも9月末までには必ず手をつけるようにしましょう。
金商法の次にややこしい範囲です。短答式企業法の中で唯一「仕組みの理解」を求められる範囲かもしれません。
よく出題され、1回の試験で2問出題されることもザラです。稀に一切出題されないときもあります。
財務会計論の組織再編に近い内容ですので、時期を合わせて勉強しても良いかもしれません。
また、企業法で先に勉強しておくと財務会計論の時に理解しやすいということもあるかもしれませんので、自分の好きなように選択しましょう。
多くのパターンがあり、覚えることが多い印象を持たれると思いますが「それぞれの株主にとってどんな影響があるのか。」という視点で共通点を見つけることができれば少しは覚えやすくなるかもしれません。
<商法>
この3つの中では最も自習で進めやすい範囲なので、積極的に片付け、8月中に終わらせましょう。
初学者は勉強が間に合わず捨てる場合も多々ありますが、割と普通に1回の試験で2問出題されたりします。
会社法総則は会社法で今まで習ってきた知識と被るものがありますので覚えやすいかと思います。
問題は商法で、会社法とは全く場面が違います。株主とか一切出てきません。言葉も聞きなれないものが多いです。
基本的には「取引先のせいで失敗したのに自分がお金を負担するのはおかしい」というニュアンスのことが各状況ごとに書かれていますが、そうは言ってもイメージしにくいので、「言葉がわからない」という次元だとしても、先生にしっかりと質問しにいきましょう。
<金商法>
最もややこしいです。
印象による勝手な推測ですけど、過年度でも捨ててる人ゴロゴロいるんじゃないのかな。
ですが当然の如く1回の試験で2問出題されます。
通常の講義だと最後に扱うと思いますが、講義のペースが遅いと試験に間に合わなくなるので、自分で進めましょう。必要があれば映像授業も使いましょう。
商法とともに8月中に終わらせられたらベストです。遅れると他の重要な理論科目を優先して一切手をつけず本番を迎える可能性があるためです。
言ってしまえば、有価証券や開示書類の名前や種類、誰がどこにいつ渡すのか、などを事細かに覚えられれば良いわけですが、すぐ忘れるし混ざります。
期間的に難しいとは思いますが、1回目の勉強が終わったら、本番までの間で十分な反復演習をするように心がけましょう。
<余談>
もし余裕がある方は、「会社法」の勉強に限っては「立法趣旨」も軽く理解するようにしてみてください。
「立法趣旨」とは、「その法律が作られた理由」のことです。短答式試験では一切問題に関係しないため覚える必要は全くないのですが、論文式試験では全ての問題に関係し、出題可能性のある範囲についてはしっかりと覚えなくてはならなくなります。
この「立法趣旨」は数が多く、必要な範囲を理解するには結構時間がかかります。このため、事前にある程度知っておくことで論文式試験をかなり有利に進めることができます。さらに、「立法趣旨」を理解することは短答式試験においても背景理解となり、暗記を助ける効果も期待できます。
とは言え、短答合格後でも十分時間はありますし、立法趣旨の理解で他の短答用の勉強が出来なくなっては本末転倒です。そもそもやらなくても全く問題ありません。
余裕がある方のみ挑戦してみてください。
<短答理論科目の共通注意点>
短答理論は4肢から2肢を選ぶ問題がほとんどです。
全肢の判断が正確に出来ればそれに越したことはありません。
実際は「○だと思うけど自信ない」「全くわからない」という肢が紛れています。
また、自分の知識が間違っており、「全肢見てみたら○が3肢あった」ということもあります。
・ 必ず全肢を確認。
・他の肢で判断できない時は、逆バリせず「○だと思うけど自信ない」を○にする。
・1肢削れば正解率は16%から33%に跳ね上がるため、1肢でも多く削る。
特に3点目が一番伝えたいことです。
1肢削れば得点の期待値が上がりますので、1肢でも多く削られるよう、なるべく論切りせずベストを尽くして本番に臨みましょう。