このブログの論文式試験のお話は、主に12月組又は過年度論文生を想定しています。5月組は全く異なるアプローチでないと時間が足りず通用しないと思います。
<短答と論文の違い>
出題範囲は全く同じで、出題形式が変わります。
・計算は、短答までは1問5分程度で解いていたところが、総合問題形式に変わることで18箇所くらいの空欄を1時間程度で埋めるようになるだけです。総合問題が苦手な方は大変かもしれませんが、特に難易度が跳ね上がるわけではありません。
・理論は、短答までは文章を読んで○×の判断が出来ればよかったところが、白紙に文章を書かなくてはなりませんから深い理解が求められます。
したがって、論文に向けての勉強は主に
①総合問題の正しい解き方を身につける
②正しい文章を書けるようにする
ことを目的に行うこととなります。
<財務課理論に関する知識及び注意点>
①財務会計論の配点が多く総合得点比率への影響が大きいため「高得点≒合格」となる。
②財務会計論は他科目からの影響を受けにくいため得点比率52未満を取るとカバーが大変。
③財務計算よりも財務理論の方が受験生の完成度が高い。
〜解説〜
①②財務会計論は200点満点です。他科目は100点満点ですので、総合得点比率への影響は2倍です。
超簡単に計算すると、
財務会計論が58、他科目全て50だと加重平均して52.29になるので合格です。
財務会計論が46、他科目全て54だと加重平均して51.71になるので不合格です。
つまり、財務会計論1科目の出来だけで、他の科目が52を超えていようが超えていまいが合否を左右させる場合があるので、最重要科目と言えるわけです。
③計算は得意不得意の影響が大きいのでしょう。これに対して理論は覚えてしまえば出来るため、計算に比べて出来る人が多いのでしょうね。財務理論の平均点は割と高いため、差をつけられないように重点的に勉強する必要があります。
<初学者向け、勉強時期について>
詳しい話は後述しますが、理論の勉強に慣れるまでに時間がかかるので、早めに取り組んでおきましょう。
短答後は、まずは全力で租税法を行えば良いですが、その合間の時間で財務理論を挟み、初回の論文答練までに論文用問題集の半分までをそこそこ正解出来る程度(80%程度)を目指しましょう。
1月になると租税、財務以外の勉強も力を入れないといけませんので、租税と財務はなるべく早めに進められるように、そして論文用の勉強に早く慣れるようにする必要があります。
<財務理論の勉強の仕方>
基本は「会計処理とその理由を説明できる。」
複数の考え方がある場合は「なぜ複数の処理が認められているのか。」「なぜ制度上認められていないのか。」
他には「この処理とこの処理はどんな共通点があり、なぜ共通点があるのか。」や「日本と外国でなぜ処理が違うのか。」
などなどが問われます。
こんな感じの問題なので、論点に対する深い理解が求められます。
ここで、「深い理解=テキスト精読、専門書漁り、会計基準暗記」とすると、非常に効率が悪いため、基本的には論文用問題集をテキスト代わりに用いることが良いと思います。
〜論文用問題集の使い方〜
①問題文を読み、「何を問われているのか」を理解する。
②模範解答を写経し、「なにを書くべきなのか」「どう書くべきなのか」を理解する。
③①〜②を繰り返し、テキスト代わりに用いて可能な限り暗記する。
「論文問題集の問題が本番そのまま出題されるわけがない」という指摘があると思いますが、「論点」自体は本番そのまま出ます。聞かれる内容もかなり近いものが出ます。そして、多くの受験生が問題集と答練で学習を行うため、問題集に載っている論点は正解率が高くなり、問題集に載っていない論点は埋没問題になりやすくなります。
また、論文用問題集はテキストの中からプロである講師が重要なところを選んで問題集にしたものです。受験生がテキストベースで学習すると、重要かどうかの判断や、どこまでの理解が求められているのかがわからず、的外れの学習をするハメになります。というか、割と問題集が網羅的なので、問題集を完璧にしたならば落ちる心配はしなくて良いです。
他にも、論文式試験は、「自分の言葉で書く」わけではなく「採点者に丸をつけてもらうために書く」必要があるため、単語や漢字、専門用語を正しく書かなくてはなりません。このため、お手本となる模範解答をじっくりと読む、写す行為は非常に有効です。
仮にテキストベースで学習を進めているとしても、問題集を解いて「みんなが解けるであろう論点を正確に答えられるのか」ということの確認を必ず行ってください。「同じ予備校の人はみんな出来ていて自分だけ知らない」というのはあまりにも虚しいです。
写経以外で問題集を解くときは、必ず添削を行うようにしてください。
「基準がわからないから添削をしない」という方もいるとは思いますが、配付される問題集は解き捨てで使うものではなく、反省し繰り返し解くためのものですので、それは教材の使い方を間違えていることになります。
部分点をつけるわけではないので、基本的には助詞以外の単語があっているかどうかを見れば良いです。
「省略できるのか」「言い換えできるのか」の判断ですが、これが出来るのであれば「その論点を理解している」ということになります。判断ができない場合は理解不足ですので、先生に聞いて確認してみましょう。
このように、勉強の仕方が短答と全く異なるため、勉強を始めてすぐは覚えるのに時間がかかり、問題1問を理解するのに10分とかかかります。
1ヶ月もすればかなりマシにはなるのですが、それまでが苦痛ですので、自暴自棄にならないように慣れるまでの期間をうまく過ごしていきましょう。
スタートがうまく行くと後がかなり楽です。(というか2〜3月はまともに勉強できないのでスタートダッシュで貯金作っておかないと大変)
<論文答練について>
①答練を受け、計算だけ自己採点をする。
②間違えた箇所、理解が足りなかった箇所をその日の内に見直し、解消する。
③①〜②を続け、復習していない答練が4個程度溜まったらまとめて解き直しをする。この際必ず時間を計り、制限時間以内に解けたかどうかも重視する。
④③を繰り返したら、「基礎答練」「応用答練」などを1ヶ月程度おきにまとめて解き直しをする。難易度に関わらず得点は160点以上、時間は2時間〜2時間半程度を目標にしましょう。
なお、初見時において理論問題は自己採点をする必要はありません。答練の理論は問題集から出題されることが多く、初見の問題の場合は「その答練で覚える」というものであるためです。
普段の勉強で覚えていたなら書けるはずですし、書けなかったなら覚え直すだけです。
解く順番は、「理論→計算」をオススメしています。
これは、理論は出来るかどうかの判断を一瞬で出来ますが、計算はその判断を一瞬で出来ないため、計算で無駄に時間を使いすぎて理論を解く時間がないということを防ぐ目的があります。
<余談>
勉強法に悩むなら問題文模範解答全暗記で良いです。
入り口が全暗記なだけで、繰り返していく内に「理解」に変わっていくので、全暗記でも「体系的な理解」にそのうち進化していきます。
ただし、ただ繰り返すだけでなく「理解をしようとする姿勢」「模範解答の読み込み」「テキストに戻ったり先生に質問する」ということは必要になりますので、注意しましょう。
<最後に>
財務会計論は多くの受験生が本気を出して勉強します。
平均点自体は知れていますが、ちょこっとマイナーくらいの論点なら平気でみんな正解してくるので、置いて行かれないように頑張って勉強しましょう。
租税法とは大違いです。